「インドって暑いんでしょう?」とよく聞かれます。
半分正解で、半分間違いです。インドは日本の約9倍の広さがあります。日本だって北海道と沖縄では全然違うのに、その9倍の国を「暑い」の一言でまとめるのは無理があります。
実際、南インドのベンガルール(バンガロール)は年間の平均気温が22度前後で、日本の春くらいの気候がずっと続きます。一方で北のデリーは、冬の朝に一桁台まで下がります。
この記事では、インドを5つの地域に分けて、それぞれの気候と特徴を見ていきます。
上段が州名、下段が州都です。各州の言語・人口・主な産業は インドの州・全35エリア一覧 にまとめています。
まず、大きさの感覚をつかむ
| 面積 | 日本との比 | |
|---|---|---|
| インド | 約328万km² | 約8.7倍 |
| 日本 | 約38万km² | 1 |
北の端(カシミール)から南の端(カニャークマリ)まで、直線で約3,200km。東京から沖縄の、さらに倍くらいの距離です。
だから、インド国内の移動は飛行機が基本になります。
| 区間 | 飛行機 |
|---|---|
| コルカタ(西ベンガル)→ ムンバイ | 約2時間30分 |
| デリー → ベンガルール | 約2時間30分 |
| デリー → チェンナイ | 約2時間45分 |
東京から台湾、あるいは東京からマニラくらいの感覚です。「同じ国の中の移動」という感覚ではありません。
鉄道で行くこともできますが、同じ区間が20時間を超えるのが普通です。安いので使う人は多いですが、時間の感覚がまったく変わります。
なぜこの地形になったのか
インドの地形は、話として知っておくと旅がおもしろくなります。
インド亜大陸は、もともと今の場所にありませんでした。 南半球から北へ移動してきて、ユーラシア大陸にぶつかった。そのときに押し上げられてできたのがヒマラヤ山脈です。いまも押し続けているので、ヒマラヤは毎年少しずつ高くなっています。
この衝突が、インドの地形をおおよそ3つに分けました。
| 地形 | 場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| ヒマラヤ山脈 | 北の縁 | 衝突でできた世界最高の山脈 |
| ガンジス平野 | 中央から北 | ヒマラヤから流れ出る川が運んだ土。世界有数の肥沃な土地 |
| デカン高原 | 中央から南 | 古い大地。ジャールカンドのあたりは台地になっている |
意外に思われるのが、南のほうが標高が高いことです。「南=暑い」というイメージがありますが、デカン高原の上にあるベンガルールのような都市は、標高のおかげで年中過ごしやすい。前の記事で「南インドが涼しい」と書いたのは、これが理由です。
そしてヒマラヤから流れ出る川(ガンジス川、ブラマプトラ川など)が運んでくる土が、インド北部の農業を支えています。人口14億人を養えているのは、この平野があるからです。
わたしが住んでいる西ベンガルは、世界最大のデルタ地帯の一部です。ガンジス川とブラマプトラ川が合流して海に注ぐ場所。
何が起きるかというと、湿度です。南の海から湿った風が吹き込んでくるので、気温の数字以上に暑く感じます。汗が止まりません。デリーの「乾いた45度」と、コルカタの「湿った35度」は、きつさの種類がまったく違います。
3つの季節
インドは四季ではなく、大きく3つの季節で考えます。
| 季節 | 時期 | 特徴 |
|---|---|---|
| 冬(乾季) | 11月〜2月 | 過ごしやすい。旅行のベストシーズン |
| 夏(酷暑期) | 3月〜6月 | 北部は40度超え。外出がつらい |
| モンスーン(雨季) | 6月〜10月 | 雨が続く。洪水・交通の乱れも |
旅行で行くなら、11月から2月が圧倒的におすすめです。それ以外の時期は、暑さか雨のどちらかと戦うことになります。
地域別に見る
北インド(デリー、アグラ、ジャイプール)
タージ・マハルがあるアグラも、首都デリーも、ピンクシティのジャイプールもここです。いわゆる「インド観光の王道ルート」がこの一帯に固まっています。
気候の特徴は、寒暖差が激しいこと。
- 夏(5月前後):45度を超える日もある。乾いた暑さ
- 冬(12〜1月):朝晩は一桁台まで下がる。普通に寒い
「インドに防寒着なんていらないだろう」と思って冬のデリーに行くと、後悔します。わたしも最初は油断しました。薄手のダウンがあっても困りません。
冬のデリーはもうひとつ問題があって、大気汚染がひどくなる時期でもあります。気温が下がって空気が動かなくなり、周辺の農地で出た煙がたまります。呼吸器が弱い方はマスクを持っていったほうがいいです。
南インド(ベンガルール、チェンナイ、ケララ)
北インドとは気候も、食べ物も、言葉も、文字も違います。同じ国だと思わないほうが理解が早いです。
- ベンガルール(バンガロール):標高約900mの高原にあるので涼しい。年間平均22度前後で、「インドで一番住みやすい」とよく言われます
- チェンナイ:海沿いで、湿気が強い。北の「乾いた暑さ」とは違う、まとわりつく暑さ
- ケララ:ヤシの木と水路の風景。雨が多く、緑が濃い
南インドは乾季・雨季の時期が北と少しずれます。チェンナイやケララは10月〜12月に雨が多いので、「冬だから大丈夫」と思って行くと雨に当たることがあります。
東インド(コルカタ、オディシャ)
わたしが住んでいるのはこの地域、西ベンガル州のハウラー(コルカタの対岸)です。
- 夏はとにかく蒸し暑い。気温より湿度がきつい
- モンスーンの雨量が多い。道が冠水することもある
- 冬(12〜1月)は20度前後で、1年で一番快適な時期
コルカタはかつてイギリス領インドの首都だった街なので、植民地時代の建物がそのまま残っています。文化・芸術の街としても知られていて、観光地としては地味ですが雰囲気はインドで一番好きという人も多いです。
西インド(ムンバイ、ゴア、グジャラート)
- ムンバイ:インド経済の中心。ボリウッド(映画産業)の本拠地。モンスーンの雨が有名で、6〜9月はかなり降ります
- ゴア:ポルトガルの植民地だった海沿いのリゾート。教会が多く、インドの他の地域とは空気が違います
- グジャラート:乾燥した地域。州として禁酒なので、お酒が買えません
ヒマラヤ周辺と北東部
- ヒマラヤ側(ラダック、ヒマーチャル):高山地帯。夏でも涼しく、冬は雪で道が閉ざされます。景色は圧巻
- 北東部(セブンシスターズ):ミャンマー・ブータン・バングラデシュに囲まれた7州。民族も文化も顔立ちも、インドの他の地域とかなり違います。東アジア系の顔立ちの人が多い地域です
北東部は州によって外国人に入域許可(Inner Line Permit)が必要なところがあります。行く前に必ず確認してください。
服装の目安
11〜2月の北インド:昼は長袖シャツ1枚、朝晩は薄手のダウンかフリース
3〜6月:通気性のいい長袖(半袖より日焼けしない)、帽子、サングラス
雨季:濡れてもいいサンダル、乾きやすい服。傘よりレインジャケット
通年:宗教施設に入る場面があるので、肩と膝が隠れる服を1セット持っておくと安心
インドは日差しが強いので、半袖より薄手の長袖のほうが結果的に快適です。現地の人も長袖を着ている人が多いのは、そういう理由です。
まとめ
- インドは日本の約9倍。「インドは暑い」は雑すぎる
- 旅行のベストシーズンは11月〜2月
- 北は乾いた暑さと寒い冬、南は高原なら涼しく海沿いは蒸す、東は湿気、西は雨
- 冬の北インドは防寒着が必要、そして大気汚染の時期でもある
次の記事では、言語を扱います。公用語が22もある国で、実際には何語が通じるのかという話です。







